村木祐輔(むらき ゆうすけ)さん(気象予報士)
生まれ育った秋田県で気象キャスターをしている村木さん。
地方局ならではの予報の伝え方の工夫や、今後チャレンジしてみたい仕事についても語ってもらった。
与えられた仕事を、与えられた以上の成果で返す
――ウェザーマップに所属してからの仕事内容を教えてください。
テレビ東京とTOKYO MXでの原稿作成と、先輩気象予報士のサポート業務からスタートしました。その頃は、ただ機械的に原稿作成をするだけではなく、「もっと伝わりやすい表現方法はないか」ということを常に考えていましたね。わからないことがあったらすぐに先輩に聞いて、先輩達がこれまで培ってきた知識をどんどん引き出して吸収するようにしていました。
――その後、テレビ東京で気象キャスターに。
はい。その時の努力が認められたのか、翌年の春にはテレビ東京で「夕方番組の気象キャスターをやらないか」というお話をいただき、気象キャスターのキャリアをスタートすることができました!与えられた仕事を与えられた以上の成果で返す努力をしていれば、必ず見てそれを評価してくれる人がいる、ということを実感しました。
その土地ならではの生活に密着した情報を入れて伝える
――現在はNHK秋田「ニュースこまち」で気象キャスターをされていますが、地方局での勤務で変化したことはありますか?
今は気象予報士が私一人なので、これまで以上に解析に時間をかけるようになりましたね。いくら準備しても本番で話せるのはほんの一握り。その中でもコメントの厚みを出すために解析に時間を割き、同じことを言うにしても何通りも表現を準備し、コメントの幅を広げられるようにします。
――伝え方ではどんな工夫をされていますか?
その土地ならではの生活に密着した情報を入れるようにしています。たとえば、秋田の冬の場合、屋根からの落雪の話をするわけですが、同じ県内でも豪雪地帯の内陸はもともと雪が落ちにくい屋根の作りになっているなど落雪の心配があまりない地域もあります。実際に現地に行って、その土地の生活様式などを知ることで、それぞれの生活にあった情報を出すように心がけています。
地方局では“唯一の気象専門家”。責任重大だが、ステップアップできる!
――地方局に来て、印象的なエピソードはありますか?
NHK秋田局に来てまだ1ヶ月も経たないころ、秋田市内の公園に桜のロケに行きました。そこで出会ったご婦人が、いつも見てるということでみかんをくださったんですよ。まだ来たばかりの地で、すでに顔を覚えてくれている。地方局ならではの視聴者との独特の距離を感じられてうれしくなりましたね。
――今の村木さんのように、地方局は気象予報士が一人というところも多いそうですが、苦労はありませんか?
基本的には解析からネタ探し、CGの発注まですべて自分でやることになります。局内では“唯一の気象の専門家”として見られますし、すべて任されているという責任感や苦労もありますが、間違いなく気象予報士としてステップアップできる場だと思っています。いざとなればウェザーマップの先輩気象予報士が相談にのってくれるので、心強いですしね!
――ウェザーマップはどんな会社ですか?
経験豊富な先輩たちがたくさんいて、みなさん“背中で引っ張る”タイプ。一から十まで教えてくれるというよりは、それぞれが現場に入り、先輩の背中を見て成長する。わからないことは自発的に聞く。そうすることで、十人十色の気象予報士が育っている会社だと思います。
これからはマーケティング需要もあるだろうマラソン天気市場を開拓したい
――村木さんは『ランナーズマイスター』という資格も取得するほど、ランニングがお好きなんですね。
はい。日差しの強さ、風のにおい、道に咲く花々、人々の服装、路面状況など、季節を感じながら走っています。走っている間に無意識にそれらを見て感じることで、天気予報のコメントの幅も広がっていると思います。
――今後はマラソンと天気を絡めたお仕事をされたいとか?
そうなんです。現在、好きなことを仕事にできて非常に充実した日々を送れているので、今後は趣味を仕事に結び付けたいですね。気象予報士目線から見たそれぞれのマラソン大会の魅力や特徴、対策を伝えたり、大会当日のピンポイント天気予報を出して、市民ランナーがわりと悩みがちな本番での服装のアドバイスをするなど、まだまだマーケティング需要があるであろうマラソン天気市場の開拓に携わってみたいです!
村木祐輔さん(むらき ゆうすけ)さん
秋田県出身。中学時代から空に興味を持ち、老若男女問わず共通の話題にできる天気を仕事にしようと、大学在学中に気象予報士資格を取得。少しでも災害を減らすことのできる気象解説者が目標。2013年からウェザーマップに所属し、放送局番組サポート業務と平行して、NHK「あさイチ」などに出演。2014年から2年間テレビ東京「ニュースアンサー」でキャスターを務め、2016年4月から地元である秋田のNHK秋田「ニュースこまち」に出演中。地元の強みを活かした「地域密着型の天気予報」を目指す。