増田雅昭(ますだ まさあき)さん 気象予報士
TBSラジオ、テレビの気象キャスターをはじめ、さまざまな天気事業や後進の育成に携わっている増田さん。後輩たちから良き兄貴分として慕われる増田さんに、現在の仕事、将来の天気予報、求められる気象キャスターなどについて話を聞いた。
気象キャスターのほかにコンサルティングも担当
——現在の仕事を教えてください。
TBSのラジオ、テレビの気象キャスターのほかに、通常の天気予報以上に詳細な情報を必要とする企業や自治体などへ、天気のコンサルティング的なサービスを担当することもあります。たとえばイベントなら、決行できないような雨が降るのかどうかや、時間ごとの雷雨や突風などの荒天のリスクを伝えたりします。大人数やお子さん向けのイベントなど、万が一災害につながってしまっては大変ですからね。天気予報だけでなく、どのような影響が予想されるか、より詳細な情報を提供しています。
天気予報は、広く知らせるものと個別の2種類
——それは、天気予報の活用方法のひとつですね。
僕は、天気予報には2種類あると思っています。ひとつはラジオ、テレビ、ネットなどのメディアを使って多くの方に知らせる一般的な天気予報。もうひとつは、イベントや行動に合わせた、個別のアドバイス的天気予報。一般的な予報を見て判断がつかず困っている方を助ける天気予報です。ウェザーマップのサービスのひとつとして展開していて、ここでも気象予報士の“伝える”力が求められます。
メディアに合わせた天気情報を発信
——その他にはどのような活動をされていますか?
ラジオ、テレビ、そしてネットで天気の情報を発信しています。ネットは、ヤフーやニフティなどでコラムを連載しています。いまはさまざまな天気予報の入手方法がありますから、それぞれのメディアやターゲットに合わせた情報の発信が求められます。たとえばネットでは若い人向けに多少やわらかい雰囲気のコラムにするなど。晴れ、雨、暑い、寒いだけでは興味を示してくれなかったり、物足りない方もいますからね。天気の情報に接してもらうことを増やすことが、災害時の防災情報への接触にもつながると思っています。
天気マークだけではわからない話をわかりやすく
——気象予報士にはさまざまな能力が必要ですね。
そうですね。各メディアにおいて最適な伝え方をするという能力が必要になりますね。一言で「晴れ」といっても気温が高いときや、風が吹くなどいろいろありますから。マークだけでは語れないのが天気です。むずかしいのは、こちらのイメージしていることとどこまで同じイメージを持ってもらえるか。そのためにどの言葉を選択して、わかりやすく伝えられるかというのが気象キャスターの力量ですね。
予測ができても伝えられなければ意味はない
——どんなときに天気予報のむずかしさを感じますか?
たとえば、翌日に強い雨が予測されている場合。気象予報士の頭の中では傘が役に立たないくらい強い雨がイメージできていても、情報を受け取る人は「そんなこと言ってたっけ?」というケースがけっこうあります。起こることが予測できたとしても、その予測がきちんと伝わらないと当たったことになりません。結局、役に立たないということになってしまいます。それを避けるために、言葉選びや伝え方が大事になってきます。
天気予報の時代の一部を担っているという自負
——的確に伝えられたときには、やりがいを感じるのではないですか?
最近はリスナーや視聴者、SNSの参加者から直接ご意見をいただき、「ありがとうございました」「大変役に立ちました」という感謝の声が届くこともあります。そういうご意見はすごくうれしいですね。あと、大きなやりがいだと僕が感じているのは、天気予報の時代の一部を担っているということでしょうか。近代的な天気予報がはじまって100年以上経つのですが、先人たちが積み重ねてきたものを次代へつなぎたいという意識がありますね。
進化し続ける天気予報を次の時代へ
——天気予報の歴史の一部として貢献しているわけですね。
自然ほど手強いものはありませんから、100%当たるのはむずかしいと思いますが、コンピュータの精度や観測技術の向上は素晴らしいものがあります。天気予報は年をおうごとに精度が高まっています。僕は仕事をはじめて15年ちょっとになりますが、15年前と比べても進化を実感しています。これを停滞させることなく、さらに進化させて未来へつなぐバトンリレーの走者のようなものですね。
ますます重要になる気象キャスターの役割
——そこで、より大切になるのが伝え方ですね。
コンピュータの予測が進化して天気予報の精度が高まっても、それを誤解やロスなく、ちゃんと伝えることがなにより大切です。今後もいままでなかった情報や用語などが登場するでしょうが、それをわかりやすく通訳・翻訳するのも僕たちの仕事です。たとえば、大雨警報と土砂災害警戒情報。どっちがあぶないかというと、土砂災害警戒情報です。意味がわからないと、情報が逆効果になるということもありますし、これらを解説していく気象キャスターの役割はより重要になるでしょう。
《1日のスケジュール》
06:30 | 起床 |
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08:00 | 家を出る |
09:30 | TBSへ出社 |
天気予報の準備、リハーサル | |
11:50 | オンエア |
終了後、お昼休み | |
13:00 | ウェザーマップへ出社 |
会社での業務 | |
ラジオの打ち合わせ、コラム執筆など | |
18:30 | 退社 |
増田雅昭さん(ますだ まさあき)さん
〈プロフィール〉
1977年12月26日生まれ。滋賀県出身。横浜国立大学経営学部卒。大学在学中に気象予報士の資格を取得し、テレビ朝日「ニュースステーション」に学生予報士として出演。気象キャスターをしながら、企業・自治体・個人などへのオーダーメイド予報や気象相談員・アドバイザーも長年担当。ネットに気象関連のコラムを執筆するほか、災害から身を守る気象情報の使い方などの講演も行っている。趣味は野球、スノーボード、スポーツと天気の関係をさぐること。