千種 ゆり子(ちくさ ゆりこ)さん 気象予報士
現在は気象キャスターだけでなく、気象デスク、クリアの講師、新聞で気象コラム執筆など、マルチな活躍をされている千種さん。今後目指す気象キャスター像や、やってみたいお仕事について伺いました。
気象デスク、気象キャスター、クリア講師、新聞コラム執筆と仕事の幅が広がっている
――現在、かなり幅広いお仕事をされていますよね?
はい。平日は週4日ほどテレビ朝日の気象デスクとして働き、土曜はテレビ朝日「スーパーJチャンネル」に気象キャスターとして出演しています。他にも、毎日新聞に隔週で気象コラムを執筆、クリアの講師も務めるようになり、より多忙な毎日に(笑)。人から「やってみない?」と言われると、とりあえず飛び込んでみるタイプです。
――「気象デスク」というのは、具体的にはどういうお仕事内容なんですか?
テレビ局や新聞社には、経済のニュースを書く「経済部」、海外のニュースを書く「外報部」などがありますが、テレビ朝日にはお天気のニュースを書く「ウェザーセンター」があります。天気予報ではなく、あくまで“ニュースとしての天気”です。例えば「東京で猛暑日が1週間続いている」→「これはかなり珍しいことではないか?」となれば、それがニュースとなります。そういったニュースになりそうなネタ探しをするのが気象デスクの仕事です。他には、出演しているキャスターのサポートの仕事も同時に行っています。
――そんなお忙しい中、新聞コラムを執筆するのは大変なんじゃ……。
元々文章を書くのが大好きなんです。確かに隔週の執筆は結構大変ですが、とても楽しんで、自由に書かせていただいています。堅い真面目な内容から、例えば「小学校では今年全然プールの授業ができていない」などの身近な内容、柔らかくて叙情的な内容、はたまたちょっとファンタジーなSF的な内容のものまで、意識して書き分けるようにしていますね。いつかエッセイ的な本を出せたら素敵だなと思っています。
地方ではマルチな力を鍛え、現在キー局で気象分析力や伝える力を日々勉強中!
――千種さんは地方局でも東京キー局でも気象キャスターを経験されていますが、それぞれのおもしろさってどういうところにありますか?
地方局のキャスターは、気象解析から画面構成、演出、時には撮影やVTR編集なども全て一人で行います。そういう意味ではマルチな力が鍛えられるし、幅広い仕事ができる場所です。一方でキー局は、既に演出のプロ、CG作成のプロがいるので、気象予報士はより「気象分析力」「伝える力」が求められます。常に自信を持って回答できるよう、とにかく“日々勉強”を心掛けています。
――日々勉強ということですが、予報をしていて難しいと感じるのはどんなことですか?
天気マークに表れない情報を様々な気象データから考えることですね。一口に雨と言っても「ザーザー降り」なのか「霧雨」なのか「シトシト」なのか。「傘を指していても濡れる」のか「長靴が必要」なのか。そういった部分まで伝えたいと思っているのですが、雨の量や降るエリアしか予測しないコンピューターの予報では、そこまではわかりません。この見極めは日々の経験がものを言いますね。
――休日もお天気のことを考えたり?
人によると思いますが、私は1日天気から意識が離れると感覚が鈍ってしまうタイプなので、休みの日でも3割くらいのパワーで天気に意識を割くことに決めています。天気が好きなので全然苦ではありませんよ。一つの例外は趣味である空手の稽古中。稽古中は天気のことなんか気にしていられないほど疲れます(笑)。
気象キャスターとして伝える技術を、伝え手としての意識を磨いていきたい
――今後、千種さんが気象キャスターとして目指す姿は?
より「伝え手」としての意識を磨きたいですね。探求心はある私。だからネタ探しにはあまり苦労しません。ただ、入口・中身は良くても、私の場合「出口=伝える技術」がまだ発展途上と感じています。今担当させていただいているスーパーJチャンネルのディレクターやアナウンサーにはベテランが多く、毎週のオンエアを通じて「伝え手としてどうあるべきか」を指導してもらっています。謙虚に毎日を積み重ねてスキルアップしていきたいです!
――気象予報士として将来やってみたいお仕事はありますか?
まだハッキリとしたビジョンはありませんが、もっと知識と伝える力をつけて、温暖化など環境問題に関する啓発活動や、機会があれば、事業・研究にも携わってみたいです。
(2017年9月掲載)
千種 ゆり子(ちくさ ゆりこ)さん
埼玉県富士見市出身。一橋大学法学部を卒業後、一般企業に就職。阪神淡路大震災、東日本大震災をきっかけに防災の道に進むことを決意。2013年に気象予報士資格を取得し、2014年4月から2年間、お天気キャスターとしてNHK青森放送局に勤務。2016年4月からはテレビ朝日でニュース原稿作成などのデスク業務を行う。2016年には、出身地である埼玉県富士見市のPR大使に就任。2017年1月から、テレビ朝日のスーパーJチャンネル(土曜)の気象コーナーを担当。