小杉 浩史(こすぎ ひろふみ)さん(気象予報士)
宮城県のテレビ番組で、気象キャスターとして出演している小杉さん。
同じ天気でも、情報番組と報道番組では伝え方に違いがあるのでしょうか?
仕事をする上で心がけていることをお聞きしました。
情報番組の気象予報は比喩を交えて分かりやすく、報道番組はスマートに
――現在の担当番組を教えてください。
月曜から金曜の夕方に放送されている、ローカル情報番組「OH!バンデス」とニュース番組「ミヤギnews every.」で気象キャスターを務めています。「OH!バンデス」は放送時間が2時間ほどあるため、計3回出演。本番終了後は席に戻って、次の出番まで実況監視をしています。土曜と日曜はお休みです。
――「OH!バンデス」と「ミヤギnews every.」、それぞれの番組で伝え方の違いなど、工夫されていることはありますか?
「OH!バンデス」の方は、天気に親近感を持ってもらえるような伝え方を意識しています。たとえば、衛星画像で低気圧の雲を「カブトムシの幼虫のような形の雲」と言ってみたり、季節の変わり目には「冬の空気と春の空気が相撲をとっている」と言ってみたり、比喩表現を使うことが多いですね。分かりやすいかどうかは別として、観ている方の印象には残っているみたいです。「ミヤギnews every.」の方は、報道番組なので、できるだけシンプルに、ストレートに伝えるように、ニュアンスや使う画面を変えています。
――気象キャスターとして心がけていることを教えてください。
メリハリ、ですね。毎日毎日「ご注意ください」ばかり言っていると、大雨や大雪など、本当に注意が必要な時の「ご注意ください」の価値が相対的に下がってしまいます。ですので、普段はダジャレなどを交えてリラックスした雰囲気で伝え、注意や警戒が必要な時はまじめに注意喚起をするようにしています。「普段はくだらないことを言っている小杉がまじめに話しているから本当に危ないんだ」と思ってもらえばいいな、と。辛いものばかり毎日食べていたら舌が慣れてしまいますが、甘いものと交互に食べるからこそ、辛さが分かるのではないでしょうか。
災害が起こりそうな時こそ、頼ってもらえる存在を目指したい
――大震災を経験した宮城県は、防災についての意識も高そうですよね?
その大震災のせいか、宮城においては「災害イコール地震・津波」と直結されてしまい、大雨や暴風、大雪などは意識される機会があまり多くありません。ですので、「この予想降水量は西日本では年に何回かある量ですが、宮城においてはそうそうない大雨です」や「これは、仙台では8月ひと月分にあたる降水量です」といった具合に、全国との比較や過去の事例などを持ち出し、注意喚起をするようにしています。宮城は、「やませ」による大冷害を被った経験が過去に何度もあるので、農家の方への配慮も忘れないようにしたいですね。
――所属されているウェザーマップについてはどのような印象をお持ちですか?
個性的な人が多いですよね。1つの会社ではありますが、一人ひとりは超個性的でバラエティ豊か。だからこそ、お互いの長所や短所を見て、切磋琢磨していける環境なのだと思います。全員仲間であると同時に、全員ライバルだと私は思っています。
――今後はどのような気象キャスターになっていきたいですか?
宮城県内には、私よりずっと前からテレビで天気を伝えている先輩キャスター達がいますので、そういった中では、私はまだまだ新参のヒヨッコです。でも、いつかは「宮城の天気といえばこの人!」と言ってもらえるような存在になりたいですね。また、一昨年に発生した関東東北豪雨の際は、たまたま夏休みをとっていて肝心な時に役に立てず、悔しい思いをしました。今後は、そういった災害が起こりそうな時こそ頼ってもらえる存在になれたら嬉しいです。
小杉浩史(こすぎ ひろふみ)さん
東京都出身。立教大学法学部を卒業後、一般企業に就職。3年間の勤務の後に、それまで関わったことのなかった理系の勉強をしたいと思い退職。アルバイト等をしながら気象予報士を目指す。2012年3月に気象予報士資格を取得。テレビ局での制作ディレクターを経て、2013年8月よりウェザーマップに所属。2015年5月からはミヤギテレビに気象キャスターとして出演。